清原の長男、慶大・清原正吾は大化けして「新井貴浩」になる? 父親と同じ「西武が指名」の可能性も

 遅咲きだったが、大きく花開いたといってよいだろう。清原和博の長男で、慶応大4年の清原正吾が東京六大学野球の今春のリーグ戦で、一塁手のベストナインに選ばれた。初めての受賞だ。

 2年秋にリーグ戦初出場、3年春にスタメン出場を果たしたが、同年秋はベンチ入りが叶わず、3年終了時点での成績は5試合出場で9打数1安打。ここで心が折れることなく、Bチームの4番で力を磨く。今年3月、1学年上で主軸を務めていた廣瀬隆太(ソフトバンク)、栗林泰三(JR東日本)、宮崎恭輔(パナソニック)が一斉に卒業すると、右のスラッガーとして覚醒してほしいという期待の意味合いも込められ、4年春のリーグ戦で4番に抜擢された。

 春季リーグの開幕戦となる東大戦1回戦で、3回に中越え適時二塁打を放つ好スタート。勝負強さと大舞台で力を発揮する姿は父親と重なる。立大1回戦では0-0の9回1死二塁で左中間フェンスを直撃する適時二塁打、値千金の決勝打となった。ライバル・早大との2回戦では、初回1死二塁で右中間に先制二塁打。3回1死一塁では変化球を左前に運び、マルチ安打。リーグ戦13試合出場で本塁打は出なかったが、打率.269、打点はチーム最多の7。記者クラブの担当記者による投票で14票中13票を集めてベストナインを受賞したのは、価値ある一打が多かったことを評価されたのだろう。

■実戦経験が圧倒的に足りない

 清原のパフォーマンスはプロの目にどう映ったか。在京球団のスカウトはこう分析する。

「お父さんと比較すると、打撃の柔らかさ、逆方向に伸びる部分が重なりますね。体は大きいけどしなやか。天性のモノでしょう。ああいう打球は教えられて打てるものではない。ただ、上半身と下半身が連動せず、パワーがボールに伝えきれていない打席が多い。これは長距離砲としてボールを飛ばすコツをつかめるかがポイントになる。そのためには練習、試合を重ねるしかない。清原は実戦経験が圧倒的に足りない。現時点ではドラフトに掛かるとしても育成契約の可能性が高いでしょう。楽しみな素材であることは間違いないですけどね」

 正吾は中学の慶応普通部でバレーボール、慶応高校でアメリカンフットボールに打ち込み、野球から6年間離れた時期がある。実力者が集まる慶大野球部では異色の経歴だが、180人を超える部員の中で4年になってレギュラーをつかんだ。

 スポーツ紙記者は「こんな選手、なかなかいないですよ。身体能力が高く、心身共にタフで努力家だから、ここまでたどりついた。ただ本人は満足していないでしょう。向上心が強い性格も魅力的です」と称賛する。

 父の清原氏はPL学園で1年から4番を務め、エースの桑田真澄(巨人2軍監督)と「KKコンビ」で甲子園に5季連続出場。優勝2度、準優勝2度と輝かしい実績を打ち立てた。

 正吾も身長186センチ、90キロの恵まれた体格から父親譲りの力強いスイングを見せるが、パ・リーグ球団の編成担当は意外な見方を示す。

「彼を見ていると、新井貴浩さん(広島監督)と重なる。球に食らいつき、追い込まれても何とか粘ろうとする必死な姿がね。長距離砲として大きな可能性を秘めている点も共通している。体が強いでしょうから徹底的に鍛え上げれば、大化けするかもしれない。6年間のブランクがあって、これだけの成績を残している。まだまだ伸びしろが十分で、潜在能力の半分も出し切れていないと思います」

■大学時代は無名だった新井貴浩

 新井監督は現役時代に通算319本塁打をマーク。本塁打王、打点王を獲得し、通算2203安打と球界を代表するスラッガーとして活躍したが、駒大では無名の存在だった。4年の秋に打点王を獲得したが、リーグ戦通算60試合出場で打率.241、2本塁打、26打点。プロに指名されるほどの実績は残していなかったため、地元の広島にドラフト6位で指名されたときには驚きの声もあった。

 学生時代の新井を取材したアマチュア担当記者が振り返る。

「力は凄かったが確実性がなく、ホームランを打つ能力も高いとは言えなかった。不器用で内野の守備も下手でした。プロであんな凄い選手になるとは、大学時代を見たら誰も想像できなかったと思いますよ。才能を開花させた大きな要因は広島での猛練習でした。朝から晩まで走り、守り、バットを振った。今の時代は無理でしょう。体が壊れる。実際にケガする選手がいた中、新井は頑丈だったので必死に食らいついていきました。あとはあの性格ですよね。常に一生懸命で明るい。どこか抜けているところがあって愛されました。プロで活躍する上で、向上心旺盛な性格も大事ですよ」

■イメージしやすい「ソフトバンクの獲得」

 正吾はNPBでのプレーを目標にしている。指名する可能性がある球団はどこになるだろうか。

 テレビのスポーツ班スタッフはこう話す。

「粗削りですがスケールの大きさを考えると、パ・リーグ向きの選手かなと感じます。イメージしやすいのはソフトバンク。12球団で唯一の4軍制を敷き、毎年ドラフトで育成の選手を多く獲得する。実戦経験を積んで結果を残せば上を目指せる環境ですし、慶大の先輩の廣瀬隆太、正木智也がプレーしているので良い刺激を受けられるでしょう。西武も獲得に乗り出す可能性があります。今季は最下位に低迷し、チーム再建に向けて長期的な視点で打線を強化しなければいけない。中村剛也、浅村栄斗(現楽天)、森友哉(現オリックス)、山川穂高(現ソフトバンク)と強打者の育成能力に長けたチームですし、父の清原さんがプレーした球団ですからね。正吾の入団が実現したら盛り上がるのは間違いない」

 清原和博が西武にドラフト1位で指名されたのが1985年。巨人入りを熱望して「涙のドラフト」となったが、西武、巨人などで活躍し、通算525本塁打、2122安打を放つ大打者となった。

 39年の月日を経て行われる今秋のドラフトで、正吾は指名されるのか。されるなら、どの球団か。評価を高めるためにも、今秋のリーグ戦での爆発に期待したい。

(今川秀悟)

2024-06-11T02:36:02Z dg43tfdfdgfd