U-23日韓戦敗北でも「準々決勝優先が適切だよ」日本通ブラジル人記者の“カタール戦推奨スタメン”「藤尾翔太に頑張ってもらうしか…」

 4月22日にアルラーヤン(カタール)で行なわれたU-23アジアカップ(パリ五輪アジア最終予選を兼ねる)グループステージ第3戦で、日本は宿敵韓国に0−1で不覚を取った。

 3月中旬から約3カ月の予定で日本に滞在しているブラジルのスポーツメディアきっての日本通チアゴ・ボンテンポ記者(38)にテレビ観戦してもらい、率直な感想を聞いた。

大岩監督は日韓戦より準々決勝に重きを置いたのだと

――この試合の先発メンバーをどう思いましたか?

「大岩剛監督は、この試合より次の準々決勝に重きを置いたのだと思う。

 グループステージ(GS)最初の中国戦で前半17分にセンターバックの西尾隆矢(セレッソ大阪)が退場処分を受けるというアクシデントがありながら1−0で勝利を収めると、中2日のUAE戦では先発メンバーを7人入れ替え、2−0で勝利を収めた。そして、すでにグループ2位以内を決めていたこの試合では、やはり中2日の試合ということで、またしても先発メンバーを7人入れ替えた。

 でも、それは中国戦の先発メンバーに戻したということじゃない。GK野澤大志ブランドン(FC東京)、右サイドバックの半田陸(ガンバ大阪)、MF田中聡(湘南ベルマーレ)を初めてピッチに立たせる一方で、このチームの根幹であるMF松木玖生(FC東京)、MF藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン=ベルギー) 、GK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ=ポルトガル)、そして2試合続けて先発してチームに貢献したMF山田楓喜(東京ヴェルディ)と左SB関根大輝(柏レイソル)の5人をあえて先発から外した。

 第2戦で藤田はプレーしておらず、松木もごく短い時間(16分間)プレーしただけだったのに、後半途中から起用しただけだった」

僕も“日韓戦より準々決勝優先”が適切だと思う

――この試合の結果によって準々決勝の対戦相手が決まる、という状況でした。勝てばこの大会初出場のインドネシアと、負ければ優勝候補の地元カタールと当たる。インドネシアには控え選手主体でも勝てると判断し、この試合でベストメンバーを揃えて勝ってカタールとの対戦を回避する、という選択肢もあったのでは?

「そういう考え方もあるだろうけど、今年初めのアジアカップで日本が準々決勝で敗退し、伏兵ヨルダンが準決勝で韓国を倒して準優勝したように、アジアでは何が起きるかわからない。この大会で、インドネシアはGSでオーストラリアとヨルダンを倒している。大岩監督と同様、僕もこの試合より準々決勝を優先するのが適切だと思う」

――韓国の先発メンバーはGS最初の2試合はほとんど同じだったのですが、この試合では第2戦(対中国。2−0で勝利)から実に10人を入れ替えました。つまり、事実上のBチームでした。

「そう。要するに、いわばBチームどうしの対戦だった。そのせいもあってか、前半はかなり緩い内容だった。日本がやや優勢だったけれど、決定的なチャンスは作れなかった」

失点シーン、GKは飛び出したらボールに触らないと

――後半、韓国が先に選手を入れ替え、強度を上げます。そして30分、先制点を奪った。右CKがゴール前の密集地帯を越えてファーサイドへ飛び、日本のGK野澤が飛び出したものの、ボールに全く触ることができなかった。身長175cmの半田が身長187cmのMFキム・ミヌ(デュッセルドルフ=ドイツ)に競り負け、頭で叩き込まれてしまった。

「GKが飛び出したら、必ずボールに触らなければならない。逆に言えば、ボールに触れないと思ったら絶対に飛び出すべきじゃない。いずれにせよ、野澤のミスと言わざるをえない。もちろん、キム・ミヌへのマークが甘かったのも失態だった」

――その後、日本は多くの決定機を作ったが、決めきれなかった。

「UAE戦で、もっともっと点が取れるチャンスがあったのに外し続けた。この試合でも同じことが起きた。

 先発したCF内野航太郎(筑波大)はほとんどチームに貢献できなかったし、後半途中から出場した細谷真大(柏レイソル)と佐藤恵允(ブレーメン=ドイツ)はシュートミスのオンパレード。チャンスの数では、日本の方がずっと多かったのにね」

両SBの守備、CFと両ウイングが気がかり

――中国戦後、「このチームの弱点はCBと左SB」と言っていました。この試合での守備陣の出来をどう思いましたか?

「CBは19歳の高井幸大(川崎フロンターレ)が素晴らしかったし、鈴木海音(ジュビロ磐田)も大きなミスはなかった。一方、両SBは守備で苦しんでいたね」

――GS3試合で、CFと両ウイングは1点も取っていません。

「内野は、将来性はあるけどまだ経験不足。細谷は、UAE戦に続いて決定機を外し続けている。佐藤は技術がある良いドリブラーだけど、やはり決定力が物足りない」

――日本で最も良かった選手は?

「CB高井。高さ、強さがあり、この大会で貴重な経験を積んでいる。右ウイングの藤尾翔太、左ウイングの平河悠(いずれも町田ゼルビア)もサイドで奮闘した。荒木遼太郎(FC東京)はテクニックと創造性を発揮したけれど、もっともっとできる」

――では一方で、物足りなかった選手は?

「GK野澤、CFの内野と細谷、MF佐藤」

――韓国で良かったと思う選手は?

「バンダナを巻いていた15番の右CB(イ・チェウォン)。日本の左サイドの攻撃にしっかり対応していた」

カタール戦は誰が先発すべきだと思う?

――25日に行なわれる準々決勝カタール戦で、日本は誰を先発させるべきだと思いますか?

「GKは小久保、最終ラインは右から関根、木村誠二(FC東京)、高井、大畑歩夢(浦和レッズ)、中盤は藤田と松木。攻撃的なチームを作るなら荒木だろうけど、大岩監督は慎重なタイプだから山本理仁(シント・トロイデン)になるのかな。3トップは、右から山田、藤尾、平河」

――藤尾と高井は、韓国戦でフル出場していますが……。

「大変だろうけど、藤尾には頑張ってもらうしかない。CFは細谷と内野が不調で、人材不足だからね。CBは、高井が疲れたら鈴木を投入できる」

――カタールは開催国で、しかも休養日が日本より1日多い。2022年にワールドカップを、2023年にアジアカップを、そして今回、U-23アジアカップを誘致しており、近年、アジアで最もフットボールに力を入れている国の一つです。そして、A代表はアジアカップを連覇中。日本は勝てるでしょうか?

「今大会のカタールの試合はダイジェストでしか見ていないけれど、選手の質は日本の方が上だと思う。勝たなければならないし、十分に勝てると思う」

日韓戦「試合内容は日本の方が良かった」とも

 日本の失点を「野澤を筆頭とする守備陣全体のミス」と斬り捨て、「チームの根幹を支える選手数人を準々決勝へ温存した」と言い切ることができるのは、日本のフットボール関係者に忖度をする必要がない外国人記者ならではだろう。その一方で、負けたからといってすべてを否定するのではなく、「ほぼBチームどうしの対戦だったけれど、試合内容は日本の方が良かった」と評価する。

 日本は宿敵に敗れてGS2位通過となり、「負けたら終わり」の準々決勝ではインドネシアより手強いと思われる開催国カタールと対戦するとあって、追い詰められた感があるのは否めない。しかしながら、どの国もあと2勝(準々決勝を勝ち上がり、準決勝も勝つか、仮に敗れても3位決定戦で勝利を収める)しなければパリへ行けないことに変わりはない。

 25日、日本はGS3試合を通じて形成された(このチームとしての)ベストメンバーを送り出し、死力を尽くして戦う。この厳しい状況でしっかり勝ち切ることができれば――チームにとって、また選手たちにとって非常に大きな成長の機会となるはずだ。

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