「一平さん、嘘でしょ…」チケット代“2日で32万円”韓国行ったファンの本音…水原一平の解雇、心震えた日本人選手への応援「その時、現地は?」―2024上半期 BEST5

2023ー24年の期間内(対象:2023年12月~2024年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。水原問題部門の第3位は、こちら!(初公開日 2024年3月25日/肩書などはすべて当時)。

「日本人が入手するのはほぼ不可能」といわれたチケット争奪戦から、試合前の爆破予告、ダルビッシュと大谷翔平の夢の対戦、そして水原一平通訳の電撃解雇まで。韓国に駆けつけた私は、文字通りの「興奮と絶望」を味わった――。ドジャース対パドレスのMLB韓国開幕戦シリーズ、激動の体験記。〈全3回の3回目/第1回、2回も公開中〉

韓国の新聞で“突きつけられた”現実

 翌3月21日、衝撃のニュースとともに朝を迎えた。通訳の水原一平さんがドジャースを解雇されたというのだ。「一平さん、ウソでしょ……」。ニュースによると、カリフォルニア州で禁止されているスポーツ賭博を行い、送金を大谷選手の口座から行っていたという。

 多くの人も感じたかと思うが、最初はフェイクニュースだと思った。

 ホテルのエレベーターを降り、ロビーに置いてある韓国「中央日報」紙を開く。大谷選手と一平さんの写真付きで「7年をともにした通訳者を解雇」という記事が載っていた。

 友人知人らからもLINEが来た。

「びっくりなニュースだね。何か詳細知ってる?」(友人)

 いや、詳細など知るわけがない。

「お疲れ様です。昨日のスタジアムで何か変化を感じましたか?」(Number Web編集部)

 いや、観客席からは何もわかりませんでした。ただ、スマホで撮った写真を見返すと、一平さんだけ離れたところに立っている。

「ドジャースなんなの?!」(母)

 いや、ドジャースを責めても仕方がない。

 去年7月ドジャースタジアムでエンゼルス戦を観戦したときに知り合った、ロサンゼルス在住の女性からも久しぶりにLINEがきた。「あまりにもショックで連絡してしまいました。あの一平さんが……という気持ちです」と。

 ああ。大谷選手の仰天結婚ニュースの時でさえ、この人たちから連絡は来なかった。野球界隈、震撼という感じだ。一平さん、どれだけ広く慕われてきたんだ……。

気持ちを整理すべく街へ…

 気持ちを切り替える。大谷選手は出場予定である。ほかにも日本人選手がこぞって出場する予定だ。なにせ、支払ったチケット代は、1日目が内野席25万円、2日目が外野3階席7万円であった。楽しまなくてはならない。

 夕方19時過ぎのプレイボールまでの間、鬱屈する思いをリフレッシュすべく、街に出た。歩いてみるとわかるが、ソウルは街の中心部であっても坂道や丘が多い。「近場の韓国旅行は今後の楽しみにとっておこう」と思っていたのだが、足腰が弱ってからだときついかもしれないな、と思った。この起伏に富んだ地形が、ガイドブックに載っている「ビューマッチブ」(景色がおいしいお店)な飲食店の人気の背景にあるのかもな、とわかった。映画で見た「半地下」の建物の構造も、この坂道の地形に由来しているんだろうと思った。

 歩くと、街のあちこちで「Seoul, my soul」という、ソウル市のキャッチコピーを見かけた。「ソウルは私のsoul<魂>を満たす」。素敵な響きだ。

 かなりの距離歩き回り、逆にパワーチャージした。さあ再び、高尺スカイドームへ。

「山本投手が通用せずに誰が通用するのか」

 本日の開幕第2戦の見どころは、言うまでもなく、メジャー初登板となる山本由伸投手だ。昨日のダルビッシュvs大谷選手の対決のように、どちらを応援しようかと迷う必要はない。山本投手の応援一択、の日である。

 昨年わたしは、1回だけ、京セラドームに山本投手の登板を見に行けた。あの9月9日のノーヒットノーラン達成の次の登板試合で、山本投手が打たれ、途中降板していた。「山本投手でもこんなことがあるのか」と、ある意味で貴重な試合を見たと思った。

 今日2024年3月21日の山本投手は、おおげさではなく、日本の全野球ファンの期待を背負って登板したと思う。「山本投手が通用せずに誰が通用するのか」と誰も彼もが思っていたに違いない。   

 けれど、1回表で大量5失点を喫し、早々とマウンドを降りた。山本投手らしからぬ制球の不安定さが、センター3階席の素人目でもわかった。ヤマモト――。さぞかし無念だろう。

 試合はいわゆる「打高」な乱打戦となった。途中、松井投手と大谷選手が7年ぶりに対戦する熱い!場面がおとずれた。大谷選手の大飛球がライトに飛ぶも、フェンス際で補球されアウト。大物を仕留めた松井投手は、この回を計9球で0点に抑えた。試合は15対11でパドレスが勝利した。

韓国で日本人に熱い応援…現地で見た

 今日は朝から晩まで、日本の野球ファンがなんとなくションボリした日だったかと思う。山本投手は、そもそも調整期間が短すぎた。でもこの先きっとメジャーにアジャストし活躍してくれると期待している。大谷選手の様子は球場の大型スクリーンで時々確認したが、表情はいつも通り穏やかであった。

 韓国開幕戦シリーズ2日間。オータニ選手への声援は、自国のヒーローであるキム・ハソン選手と同等か、それを上回っていた。ダルビッシュ、ヤマモト両投手へも、ドジャースファンかパドレスファンかを問わず、たくさんの声援が上がっていた。松井投手が中継ぎ登板したとき、わたしが「松井、行けーー!」と声援を送ると、周りもそれに気づいて「マツイ! マツイ!」と応援を始めた。知名度がそれほど高くなくても、同じアジア(日本)の選手を応援したい気持ちが伝わってきた瞬間だった。

 日本と韓国は、切磋琢磨しあうライバルであり仲間である。そして、日韓の熱いsoulのぶつかり合いが見られるのが、今年のナ・リーグ西地区でもある。大谷選手ら所属のドジャースをはじめ、キム・ハソン選手がいるパドレス、イ・ジョンフ選手のジャイアンツ……。

 今回、現地観戦で目の当たりにした韓国ファンらの日本人選手への熱い応援は、少しションボリしていたわたしのsoul〈心〉を癒してくれた。そのことを忘れないでいようと思う。

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