巨人「スガコバ」復活で防御率0.44…菅野智之34歳のために「直近5年の通算打率.116」同い年の小林誠司は“もう少し打てる捕手”となれるか

 34歳の巨人・菅野智之が久々に好調だ。一時はNPBを代表する絶対的エースであり、現役5位の123勝を挙げている大投手だが、昨年は4勝8敗、防御率3.36という成績に終わり、もうピークを過ぎたかと思えたが、現時点での防御率は0.44でセ・リーグでは同僚の高橋礼に次ぐ2位につけている。

 復調のポイントはいくつかあったと思う。今季は短いイニングながら、オープン戦でもしっかり投げることができたし、100球近くなった終盤になっても球速があまり落ちていない。調整が久々にうまくいったのかもしれない。

 しかしそれ以上に大きいのは「小林誠司」の存在ではないか。

捕手別で菅野の投手成績を見ると、やはり小林が

 昨年、菅野の球は大城卓三が13試合、岸田行倫が1試合受けた。一方で小林誠司は極端な打撃不振もあって、2022年6月17日の中日戦を最後にバッテリーを組んでいなかった。

 最近の菅野の不振と好調を「受ける捕手のせい」にするのは短絡的ではあろうが、菅野にとって同い年の小林は、最高の相方なのは間違いないところだ。

 2013年に入団した菅野の投手成績を、捕手別で見るとこうなる(以下すべて4月22日時点)。救援登板を除く。

 小林誠司:123試 63勝33敗872.1回813振 率2.09

 大城卓三:62試 29勝20敗394.2回323振 率2.76

 阿部慎之助:47試 23勝11敗322.1回259振 率2.46

 炭谷銀仁朗:8試 3勝3敗44.2回41振 率4.03

 加藤健:5試 3勝1敗33.2回20振 率3.48

 相川亮二:4試 0勝3敗22.2回14振 率7.15

 實松一成:2試 1勝0敗13回7振 率2.08

 岸田行倫:2試 1勝0敗12.1回7振 率5.11

 菅野が入団して最初に組んだ捕手は、現監督の阿部慎之助だが、その後は小林が正捕手となり、123勝の半分以上の63勝を小林とのコンビで挙げている。それだけでなく、防御率も2試合だけ組んだ實松一成に次いで良い2.09。

 菅野が沢村賞を獲得した2017、18年はほぼすべての試合で小林がマスクを被っていて、17年WBCでは日本代表でもバッテリーを組んだ。「スガコバ」との愛称で多くのファンを持つが――菅野にとって小林は、まさにベストパートナーなのだろう。

阿部新監督になって復活した“スガコバ”

 前述のとおり菅野と小林は同い年であり、入団年次も菅野が1年早いだけ。同世代で同じ時代を歩んできた。20代の若いころから30代に差し掛かり、同世代だけに「体力の衰え」も共感できたのではないか。

 昨年の小林は一軍の試合にはわずか21試合に出場、安打は1本だけ。そろそろキャリアも終わりかと思われたが、今季、菅野と組んで好成績を残したことで、息を吹き返しつつある(ただし今季も18打数2安打の打率.111と「専守防衛」に変わりはないが)。

 阿部慎之助監督は、デビューしたての菅野の球を受けた捕手であり、その後一塁に回って小林と菅野のバッテリーを見続けていた。小林のリードの機微や、キャッチング、肩の良さなども十分にわかっていたはずだ。

 菅野の伯父である原辰徳前監督は「菅野と相性のいい小林」よりも「打てる大城」との組み合わせを優先した。ただ、当時の阿部コーチは菅野を再生させるためには小林の存在が依然として必要――と考えたのかもしれない。

阿部ら「打てる捕手」の一方で「エース専用捕手」も

 プロ野球において「打てる捕手」ほど重宝する存在はない。本来、捕手は守りの要であり投手をリードする役割だ。打撃の方は半ば目をつむって、下位打線に置いて「つなぐ打撃」に期待する程度の存在である。

 だからこそ、ごくたまに打撃の良い捕手が出現すると、チームにとってはまさに幸甚であり、攻守の要として重用することになる。野村克也、木俣達彦、田淵幸一、古田敦也、城島健司など「打てる捕手」は球史に名を残している。ほかならぬ阿部慎之助も、巨人史上最強捕手という評価がある。

 しかし「打てる捕手がすべての投手と相性がいい」とは限らない。むしろそういうケースの方がレアなはずで、特にエース級の投手の場合、主力捕手との相性がよくないために「エース専用捕手」を仕立てるようなケースがある。

 昨年まで、パ・リーグの絶対的なエースだったオリックスの山本由伸は、若月健矢と組むことが多かった。もう一人の捕手、伏見寅威も若月と打撃、守備ともに遜色ない実力の持ち主だったが、昨年、西武から当代屈指の打てる捕手・森友哉がFA移籍したタイミングで、山本由伸とコンビを組む若月が残り、伏見がFAで移籍したのは「エース専用捕手」ではなかったからだろう。

 昨年は森友哉も2試合ほど山本と組んだが、最終的に山本は前年同様、若月とバッテリーを組んだ。事程左様に投手と捕手の相性は難しいものである。

 今年の巨人も大城をメイン、岸田を2番手としつつも小林を「菅野専用捕手」として起用するのだろう。それで菅野が再生するのならば、十分にメリットがあるからだ。それだけ小林のキャッチングの的確さ、そして盗塁阻止率の高さは特筆ものではある。

さすがに“菅野より低打率”では…

 ただ、それにしても「もう少し打てないものか」との思いは拭えない。

「専守防衛タイプ」で打撃成績が良くない捕手でも、ソフトバンクの甲斐拓也は8番打者として存在感がある。時折大きな当たりを打つし、好機でクリーンヒットではないにしても「嫌らしい安打」を打つなど結構活躍するのだ。ヤクルトの中村悠平も8番で、四球もよく選び、ときおりタイムリーヒットを打つなど意外性のある打撃を見せる。

 しかし小林は2020年以降、最も良い打率が2022年の.148(88打数13安打)であり、昨年など一軍で8打数1安打の打率.125、二軍でも9打数1安打、打率.111だったのだ。そして犠打もここ5年で8個しか記録しておらず、キャリア通算打率は.207である。

 投手でも昨年、菅野智之は21打数5安打、打率.238を記録している。「投手よりも打席で期待できない捕手」では厳しいと言われても致し方ないだろう。

直近5シーズンの打率.116の改善はなるか

 小林はもともと「打てる捕手」ではなかったが、それでも2019年までは6シーズンで打率.219(1541打数337安打)14本塁打を打っていた。しかしそれ以降は5シーズンで.116(207打数24安打)本塁打は1本だ。そもそも打席を与えられておらず、スタメンで出場しても、代打を出されることが多い。

 しかし今後、菅野がローテを維持してその捕手を小林が務めるとすれば「打」の問題がクローズアップされる可能性が高い。急に打撃力が向上することは考えられないにしても、小林自身が打撃への意識をもってしっかりバットを持つことが大事ではないか。

 小林は菅野が登板した18日の阪神戦で先制タイムリーヒットを放ち、また21日の広島戦では降雨コールドで幻となったものの、6回に犠牲フライを放った。菅野智也の復活とともに、小林誠司も復活――となれば巨人のリベンジも見えてくるだろう。

週間記録:ヤクルト村上が3本塁打と上昇気流

【2023年4月15日~21日 週間成績】

〈セ・リーグ〉

・今季成績

 阪 神21試11勝8敗2分 率.579

 中 日20試10勝8敗2分 率.556

 巨 人20試9勝8敗3分 率.529

 DeNA19試9勝10敗0分 率.474

 広 島19試8勝9敗2分 率.471

 ヤクルト19試7勝11敗1分 率.389

・4週目の成績

 阪 神6試5勝0敗1分 率1.000

 広 島5試3勝0敗2分 率1.000

 DeNA5試2勝3敗0分 率.400

 ヤクルト6試2勝4敗0分 率.333

 中 日6試2勝4敗0分 率.333

 巨 人6試0勝3敗3分 率.000

 阪神と広島は今週負けなし。先週5連勝の巨人は今週勝ち星なしで3つの引き分け。中日も4連敗と急停車した。

〈打撃成績5傑〉※打撃の総合指標であるRC=Runs Create順

 村上宗隆(ヤ)22打9安3本5点1盗 率.409 RC7.59

 森下翔太(神)20打9安1本5点0盗 率.450 RC6.83

 牧秀悟(De)20打8安2本7点1盗 率.400 RC6.23

 カリステ(中)22打12安0本2点0盗 率.545 RC5.66

 サンタナ(ヤ)20打6安1本1点0盗 率.300 RC4.70

 

 村上宗隆がようやく本調子となり3本塁打。ヤクルトのオスナも3本塁打。打点はDeNA牧が7打点。盗塁は阪神の近本光司が2。

〈投手成績5傑〉※リーグ防御率に基づくPR=Pitching Run順

 才木浩人(神)1登1勝7回 責0率0.00PR2.64

 戸郷翔征(巨)1登7回 責0率0.00PR2.6

 青柳晃洋(神)1登1勝6回 責0率0.00PR2.27

 伊藤将司(神)1登1勝6回 責0率0.00PR2.27

 九里亜蓮(広)1登6回 責0率0.00PR2.27

 阪神の才木は4月21日の中日戦で7回零封、巨人の戸郷も4月19日の広島戦で7回零封も勝ち星つかず。救援では中日マルティネスが2セーブ。阪神の岩崎優、桐敷拓馬、広島の塹江敦哉、DeNA徳山壮磨、巨人の船迫大雅、西舘勇陽が2ホールドをそれぞれ上げている。

パリーグでは日本ハムが2試合連続完封

〈パ・リーグ〉

・今季成績

 ソフトバンク19試11勝6敗2分 率.647

 日本ハム18試10勝7敗1分 率.588

 オリックス21試10勝10敗1分 率.500

 ロッテ19試9勝9敗1分 率.500

 楽 天20試8勝11敗1分 率.421

 西 武19試7勝12敗0分 率.368

・4週目の成績

 日本ハム5試4勝0敗1分 率1.000

 オリックス6試3勝2敗1分 率.600

 楽 天6試3勝3敗0分 率.500

 ロッテ5試2勝3敗0分 率.400

 ソフトバンク5試1勝2敗2分 率.333

 西 武5試1勝4敗0分 率.200

 日本ハムが2試合連続完封など好調。首位ソフトバンクは1勝に終わった。

〈打撃成績5傑〉

 頓宮裕真(オ)22打8安2本9点0盗 率.364 RC5.97

 セデーニョ(オ)24打8安1本6点0盗 率.333 RC5.59

 近藤健介(SB)16打4安2本5点0盗 率.250 RC5.42

 紅林弘太郎(オ)23打9安0本3点0盗 率.391 RC5.07

 マルティネス(日)20打6安2本4点0盗 率.300 RC4.04

 オリックス頓宮は絶不調から復活。セデーニョは依然として好調を維持している。本塁打は頓宮、日本ハムのマルティネス、ソフトバンク近藤にロッテのポランコが2、打点は頓宮の9が最多。盗塁はオリックスの福田周平、ソフトバンク柳田悠岐が2回成功している。

〈投手成績5傑〉

 北山亘基(日)1登1勝9回 責0率0.00PR3.07

 加藤貴之(日)1登1勝9回 責0率0.00PR3.07

 西野勇士(ロ)1登1勝7.2回 責0率0.00PR2.62

 エスピノーザ(オ)1登1勝7回 責0率0.00PR2.39

 宮城大弥(オ)1登1勝9回 責1率1.00PR2.07

 日本ハムは4月20日、21日のロッテ戦で北山、加藤貴が2試合連続完封。日ハムでは1995年7月4日、5日の西武戦でのグロス、西崎幸広以来。救援では楽天則本昂大が3セーブ。ソフトバンクの松本裕樹が3ホールドを挙げた。

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