桃田賢斗の代表引退会見、記者の質問に返ってきた“予想外の答え” バドミントンの未来を思い、描いた今後の人生プラン

◇記者コラム「Free Talking」

 バドミントン男子の桃田賢斗(29)=NTT東日本=が日の丸のユニホームに別れを告げた。先月18日の代表会見。黒髪、黒スーツ、淡いブルーのネクタイで登壇した。人々に愛され、大人になった桃田がそこにはいた。

 2013年9月のジャパン・オープン。初めて桃田を取材した。日本バドミントン協会幹部から「すごい才能を持っている」という”推し”もあった。まだ、金髪になる前の茶髪だった気がする。10代で「子どもが憧れるバドミントン界にしたい」と豪語。見た目と違ってラケット技術は繊細で、目を引いた。

 ただ、それ以上に記憶に残っている光景がある。観客席の一角にあった所属チームの控え所で、堂々とスナック菓子を頰張っていた。まだ19歳、敗退後とはいえ…。直前までサッカーW杯を目指すプロ選手のストイックな食生活を見ていたので、落差に驚いた。

 その後、記者は再びサッカー担当に戻り、16年に違法賭博問題で出場停止処分を受けた桃田が、金髪から黒髪にして出直した姿は取材していない。虚栄心を剝ぎ取り、地味な練習を繰り返したのだろう。「スタミナ」が武器になった。男子初の世界ランキング1位、世界選手権の連覇は、才能だけではない日々の積み重ねの結晶だ。

 食にもこだわったのだと思う。代表引退会見の桃田からスナック菓子を連想できなかった。だからか…。代表を引退して私生活でやりたいことを質問した。「もしかしたらポテチとビールなんて言うかも」と期待したが、まだ国内で競技は続ける。浅はかなもくろみは見事に裏切られ、予想外の答えが返ってきた。

 「自動車の免許を取りに行きたい」

 今後は、被災地・福島などで子どもたちを指導するという。五輪のメダルとは縁のない競技生活となったが、23年の好きなスポーツ選手(笹川スポーツ財団調べ)で7位。根強い人気があり、プレーと生きざまで引き付けた。10代で語った「子どもが憧れるバドミントン界にしたい」。今度は、ラケットだけでなくハンドルも握り、全国各地で夢の種をまく―。会見後、名古屋へ戻る新幹線。ほほ笑ましい未来を想像して飲んだハイボールは格別だった。(アマチュアスポーツ担当・占部哲也)

2024-05-04T01:44:05Z dg43tfdfdgfd