【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分

 ペナントレースは対戦が一巡し、ここからが各球団の正念場。大混戦の様相を呈するなか、江本孟紀氏(76)、中畑清氏(70)、達川光男氏(68)による本誌『週刊ポスト』名物企画「ENT座談会」を開催。120分にわたる激論は、阪神の話題で幕を開けた。【前後編の前編。後編を読む

【写真】120分にわたる座談会のアザーカット。他、岡田彰布監督や佐藤輝明なども

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中畑:今季のペナントレースを一言で表わせば「混セ混パ」だね。

達川:セは去年優勝した阪神が悪いですからね。

江本:今年の阪神は“アレ”に“レ”がもう一個つくんです。

中畑:何それ?

江本:“アレレ?”とね(一同爆笑)。巨人との開幕戦が象徴的で、3回1死一・二塁の場面で森下(翔太)の右中間への打球を、梶谷(隆幸)にダイビングキャッチされた。あれが抜けていれば……というように、ひとつ“レ”が多い場面が増えて苦しい。

中畑:深刻なのは佐藤(輝明)だよね。日本一で一皮剥けるかと思ったけど、ボール球を振って三振と凡打というスタイルが全く変わっていない。

江本:攻め方を間違えなければ打たれない。だから岡田(彰布)監督は、佐藤より森下のほうをはるかに期待していると思うよ。それに去年は、大竹(耕太郎)と村上(頌樹)、才木(浩人)で30勝するとは誰も予想してなかったけど、今年も同じくらい働けるか。

達川:ボクはソフトバンクで2017~2018年に大竹と一緒にやったけど、真っ直ぐが走らないとしんどい。去年は12勝のうちカープに6勝ですからね。勝ち星が偏っているし、131イニングで規定投球回数にも達しなかった。

江本:それで12勝をあげたんだから、幸運としか言いようがないよ。

中畑:日本一のメンバーがみんな残っているから、ぶっちぎりの優勝をすると思いがちだけど、2年続けて選手が同じ状態というのはあり得ない。その歪みが出てくるだろうね。それでも連覇したら、今回は岡田監督の手腕がものすごく評価されると思う。

江本:でも、(岡田監督は)落ち着いているよね。全く慌てない。

中畑:悔しいくらいね。

江本:先を考えていないから。あと1年か2年、やればいいと思っている。

達川:奥さんの手記を読むと、本当に今年辞めそうだけどね。岡田監督はコーチの言うことは聞かんが、奥さんの言うことは聞くらしいけん。

筒香は巨人に欲しかった

中畑:巨人は阿部(慎之助)監督が若い選手を使っているが、もう少し腰を据えて戦ってもいいと思う。吉川(尚輝)の使い方にしても、当初は8番に固定していて、阪神の木浪(聖也)の起用法をパクったんだろうが、オレが解説で「この打順は変えないでしょうね」と言ったら次の試合で変えていたよ!

達川:その解説を聞いて変えたんじゃないですか(笑)。

中畑:かもね(爆笑)。それにしても、新人の佐々木(俊輔)も含めてどっしり構えて使えばいいのに。開幕前に阿部監督には「選手を育てるためには我慢だよ」と言ったんだけど、その姿がなかなか見られない。原(辰徳・前監督の)野球で成功してきたと勘違いしてるんじゃないの。

江本:まさにその通り。去年の阪神は、打線を固定したから機能した。ここ数年の巨人は1、2番を固定したことがない。佐々木や門脇(誠)を固定するかと思ったが、同じ間違いをするのはなぜだと不思議で仕方ない。

中畑:チーム状態を見れば、巨人には筒香(嘉智)が必要だと思ったけどね。新外国人(オドーア)が帰っちゃったし。筒香なら計算できるから、いい補強になったはず。

江本:筒香ね……。日本でしか合わないヤツが向こうに行くから失敗する。外国人の身体を見て、上体ばかり鍛えて下半身が使えなくなり、力みまくるんです。

中畑:もともとパワーピッチャーに弱かったしね。

達川:そうなんですよ。メジャーの155キロには対応できなかったけど、変化球を打つのがうまいから、日本に帰ってきたら結果を残すと思う。筒香、岡本(和真)、坂本(勇人)のクリーンナップなら脅威でしたよ。

中畑:本来なら岡本が打線の柱なんだろうけど、本当の柱に感じないんだよね。打てなかった時のしぐさや表情が、すごく無気力に感じるんだよ。巨人で6年連続30本塁打を打ったら大スターなんだけど、商品価値を自分で下げている。損ですよ。

江本:要は1枚足りないから、クリーンナップも決まらないし、1、2番もコロコロ変える。

中畑:筒香は巨人なら戦力の柱になったと思うけど、DeNAだと若い選手が出ているからな……。ドラ1の度会(隆輝)を代えてもらいたくないんだよね。最初は線が細くてひ弱な感じがしたけど、練習を見ると(バットが)振れる。

達川:度会はカープとの開幕戦で、九里(亜蓮)から同点3ラン。あれがなければ広島の3連勝もあったのに……。度会の2試合連続弾で、チームが勢いに乗りましたよ。

江本:当たった時はいいスイングをしているが、やはりスタミナがない。新人はみんなぶつかる壁だからね。それで休むか、掛布(雅之)みたいに走るか。その差が出てくるでしょうね。今は疲れたら休ませるから。

中畑:結果が出なくても、三浦(大輔)監督には使い続けてもらいたいね。

後編へ続く

【プロフィール】

江本孟紀(えもと・たけのり)/1947年、高知県生まれ。1970年ドラフト外で東映入団。1972年に南海に移籍し、野村克也とバッテリーを組む。引退後は参議院議員やタレントとして活躍。

中畑清(なかはた・きよし)/1954年、福島県生まれ。1975年ドラフト3位で巨人入団。三塁手として活躍し、原辰徳の入団後は一塁手に。引退後の2012~2015年、DeNA監督を務めた。

達川光男(たつかわ・みつお)/1955年、広島県生まれ。1977年ドラフト4位で広島入団。正捕手として活躍。広島監督や阪神などのコーチを歴任し、ソフトバンクでは日本一を経験。

※週刊ポスト2024年5月3・10日号

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