清宮幸太郎、中村奨成もトレードささやかれる…伸び悩むドラ1選手たち

昨年オフ、日本ハムの吉田輝星がオリックスにトレード移籍し話題になった。吉田は甲子園で「金農旋風」を巻き起こし、ドラフト1位で入団したスター選手。ファンの期待が大きかっただけに、トレードは賛否の議論を巻き起こした。同じようにドラフト上位で入団しながら伸び悩み、トレードがささやかれる選手たちがいる。

 開幕して1カ月が経過し、セ・リーグは連覇を狙う阪神が首位に立ち、パ・リーグは4年ぶりのV奪回を狙うソフトバンクが首位を快走している。(記録は5月4日終了時点)

 スポーツ紙デスクは今後の展望を占う。

「セ・リーグは阪神の打線が活気づけば、投手力は安定しているので一気に突っ走る可能性がある。残りの5球団は突出した力がないので混戦に持ち込みたいところです。パ・リーグはソフトバンクが4月下旬に7連勝を飾るなど好調だが、このままいくとは思えない。リーグ4連覇を狙うオリックスは森友哉、西川龍馬ら主力が調子を上げてくれば優勝争いに加わってくるでしょう。台風の目になっているのが日本ハムです。野球の質が上がり、攻守でミスが減った。昨年までは試合運びで拙さが目立ち大型連敗を喫していたが、今年は十分に戦える。CS進出の可能性が十分にあるし、展開次第では優勝も狙える」

 日本ハムは万波中正、アリエル・マルティネス、郡司裕也、若手成長株の田宮裕涼が打線の核になっている。

スポーツ紙記者は、「4人に共通するのは打つだけでなく守備面での貢献度が大きいこと。あと野球IQが高い。マルティネスと郡司は元捕手ということが影響しているかもしれません。新庄剛志監督は守備、走塁での状況判断に重点を置いています。打撃に特化した選手は際立った成績を残さないと厳しくなる」と指摘する。

■セ・リーグの球団が清宮をチェック

 育成に主眼を置いていた新庄監督の起用法が、実力主義に変わってきたことで厳しい状況に置かれた選手も出てきている。守備難の野村佑希は開幕から「5番・三塁」でスタメン起用されていたが、8試合出場で打率.077と結果を残せず4月12日に登録抹消。自主トレ期間中に左足関節捻挫で出遅れた清宮幸太郎は4月19日に1軍昇格したが、9試合出場で打率.083、0本塁打。一塁、三塁、左翼と様々なポジションを守っている。

 清宮は守備能力が決して低いわけではない。昨季は三塁に固定されるとボールさばきにミスが少なく、送球も安定していた。ただ、試合中の状況判断でミスが目立つ場面が時折あった。20本以上の本塁打を打つ能力があるなら我慢して起用してもらえるが、昨季は打率.244、10本塁打。今年は一塁がマルティネス、三塁は郡司がレギュラー格のため、ベンチを温める機会が多い。

 ドラフトで7球団が競合し、鳴り物入りで入団した清宮もプロ7年目。故障がちで、規定打席に達したシーズンは2022年のみだ。前出の記者は、「将来の主力として期待されたが、伸び悩みの感は否めない」と指摘し、こう続ける。

「今年1軍に定着できないようだったら、選手が輝く環境を模索するためにもトレードの可能性がゼロとは言えません。同じドラフト1位の吉田輝星も昨オフにオリックスにトレード移籍しましたしね。実際にセ・リーグの複数球団が清宮をチェックしています」

■中村奨は広島を離れたほうがいい?

 トレードで言えば、さらに現実度が高いのが中村奨成(広島)だ。地元・広島市出身で、広陵高に進学した3年夏の甲子園では1大会個人最多の6本塁打をマーク。ドラフト1位で広島に入団して将来の中心選手として期待されたが、プロ7年目の現在も1軍に定着できていない。今年は3月31日に1軍昇格したが、スタメン起用された4月4日のヤクルト戦(マツダ)で3打数無安打に終わるなど3試合出場で無安打と結果を残せず、1週間あまりでファームに降格した。

 広島を取材する記者は中村奨の現状についてこう語る。

「持ち味の打力を生かして三塁や外野で起用され、ファームでは結果を残していますが、1軍で力を発揮できないシーズンが続いています。伸び悩んでいる原因は技術面だけでないように感じます。先輩たちに野球に取り組む姿勢の甘さを指摘されたように、精神面で意識を高く持たないと1軍では通用しない。西川龍馬がオリックスにFA移籍し、外野の1枠が空いた今年はレギュラー奪取のチャンスでしたが、宇草孔基が復活し、田村俊介、二俣翔一、久保修と若手が次々に台頭している。ファームに末包昇大が控えていますし、中村の存在感が薄くなっている。地元の広島は居心地がいいので、他球団に移籍した方が本人にとって良いように感じます」

 打撃センスは光るモノがある。4月30日のウエスタンリーグ・ソフトバンク戦では同点の9回に左翼席へ運ぶ決勝アーチ。他球団の編成担当は「高いコンタクト能力と長打力を兼ね備えている。DeNAから現役ドラフトで中日に移籍してブレークした細川成也のように、きっかけをつかめば1軍で十分に活躍できると思いますよ。貧打で苦しむ球団は欲しい選手ではないでしょうか」と高い評価を口にする。

■背水の陣の森敬斗

 背水の陣を迎えている「ドラ1」がもう一人いる。プロ5年目の森敬斗(DeNA)だ。走攻守3拍子揃った遊撃手だが、潜在能力の高さを生かしきれていない。昨季は開幕スタメンを勝ち取ったが、打撃不振で6月末にファーム降格。8月に右有鉤骨摘出手術を受けた影響もあり、9試合出場のみに終わった。自ら「ラストチャンス」と語っていた今年も開幕からファーム暮らし。昨年のドラフト4位のルーキー、石上泰輝が遊撃を守っている。

「石上はまだまだ攻守で発展途上だが、一本立ちするようだと森の立場がさらに厳しくなる。DeNAは今永昇太(カブス)、バウアーが抜けて、平良拳太郎も右肩の違和感で戦列を離れている。先発陣の層が厚いとは言えない状況で、トレードで即戦力の投手の獲得に動くことは考えられます。森は他球団の編成の評価が高いので、交換要員として要求される可能性がある」(パ・リーグ球団の編成関係者)

 貧打で苦しむ巨人にも、ファームで他球団の評価が高い選手がいる。プロ6年目の増田陸だ。高卒ドラフト2位で入団し、育成契約も経験したが22年に再び支配下昇格し、69試合出場で打率.250、5本塁打をマーク。佐々木朗希(ロッテ)の161キロ直球を右中間に運ぶ先制適時二塁打を放つなど思い切りよい打撃で、一時は中田翔(中日)を押しのける形で一塁のスタメンで出場していた。さらなる飛躍が期待されたが、昨年は7月にファームの試合で左肘を負傷して長期離脱するなど1軍出場なし。今年も開幕からファームでプレーしている。

 ある在京球団のコーチは「彼はタイミングの取り方が天才的。直球に差されないし、変化球にも対応能力が高い。打撃のシルエットで言えば鈴木誠也(カブス)と重なります。1軍で常時起用すればある程度結果を残すと思いますよ」と太鼓判を押す。巨人の外野陣は変革期を迎え、萩尾匡也、佐々木俊輔ら若手が台頭している。増田陸もこの争いに割って入りたい。

 トレードは決してマイナスではない。昨年6月に中日と日本ハムの間で成立した郡司、山本拓実と宇佐見真吾、斎藤綱記の2対2のトレードは選手、球団が共にプラスとなったトレードの好例と言える。望まれた環境でプレーして素質を開花させた選手は過去に何人もいる。

 トレード期限の7月末まであと3カ月。各球団のウィークポイントが明確になってきた中、トレード補強に要注目だ。

(今川秀悟)

2024-05-05T02:15:02Z dg43tfdfdgfd