篠塚和典が考える巨人ベストオーダー 熾烈な外野の人選は? 坂本勇人の打順は?

 昨年、リーグ4位に終わった巨人は、阿部慎之助新監督の下で巻き返しを図る。開幕直前に新助っ人として期待されたルーグネッド・オドーアが退団する緊急事態もあったが、今季の野手陣はどんなオーダーになるのか。

「芸術的」と称されたバットコントロールと守備で長らく巨人の主力として活躍し、引退後は巨人の打撃コーチや内野守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任した篠塚和典氏に、今季の巨人のベストオーダーを考えてもらった。

【期待の若手たちは「まずは3年」】

――内野陣から伺ってよろしいですか?

篠塚和典(以下:篠塚) まずキャッチャーは大城卓三、内野はファーストが岡本和真、セカンドが吉川尚輝、サードが坂本勇人、ショートが門脇誠。問題は外野ですね。

――オープン戦では、ドラフト3位ルーキーの佐々木俊輔選手が打率.400(出塁率.429)と結果を出し、外野の競争が激しくなりましたね。

篠塚 佐々木が外野陣にいい刺激を与えてくれましたね。レフトは育てていかなきゃいけないことも含めて秋広優人と思っていたのですが、状態が上がらず開幕二軍スタートになったので、丸佳浩か梶谷隆幸でしょうか。ただ、全体的に右バッターが少ないんですよね。オコエ瑠偉や萩尾匡也あたりがしっかりしてくれればいいのですが......。

 ルーキーの佐々木や泉口友汰ら若手は、とりあえず3年くらいはいい成績を残さないと。本当の意味で戦っていけるのはそれからだと思います。選手は3年ぐらい使ってみなければわかりませんし、そこで成績を残して初めてレギュラーと言えます。門脇も、今年はレギュラーと言われていますけど、ここから3年が勝負です。8年目を迎える吉川も、守るほうは問題ないと思いますが、打つほうの安定感が欠けていますね。

――外野は悩みどころですが、センターは好調をキープしている佐々木選手を選びますか?

篠塚 思いきってセンターに佐々木を起用するというのもひとつの手ですが、オーダーのバランスを考えると、左の佐々木ではなく右バッターを入れたいんです。ただ、オコエはオープン戦で結果が出ていませんし、萩尾も「もう少し」というところ。外野は選手を決めるのが難しいですね。ひとまずセンターはあと回しにします。

 とはいえ、ライトも難しいですね......。丸や長野久義はどのぐらいの成績を残すのかがわかっている選手ではありますが、ベテランの丸や長野を(阿部)慎之助が使うのか。はたまた今年は、浅野翔吾など若い選手をしっかり育てていく方向に舵をきるのか。実際の開幕のオーダーを見たらわかるでしょうね。

――センターの候補として、松原聖弥選手もいいアピールを続けています。

篠塚 そうですね。左バッターが多くなってしまいますが、個人的にセンターには松原を使いたいです。キャンプから、今までとは違う気持ちで取り組んでいるのが伝わってきましたし、慎之助も松原に期待している。佐々木と松原あたりを競わせていきたいですね。

【いつまでも岡本と坂本に頼っていてはダメ】

――ある程度ポジションが決まったところで、打順はどうされますか?

<篠塚和典が考える巨人のベストオーダー>※開幕戦を想定

1番 吉川尚輝(セカンド)

2番 松原聖弥・佐々木俊輔(センター)

3番 坂本勇人(サード)

4番 岡本和真(ファースト)

5番 丸佳浩・梶谷隆幸(レフト)

6番 大城卓三(キャッチャー)

7番 丸佳浩・梶谷隆幸・長野久義・浅野 翔吾・オコエ瑠偉・松原聖弥、萩尾匡也(ライト)

8番 門脇誠・泉口友汰(ショート)

篠塚 僕は今の阪神と同じように、「ポジションも打順も固定するべき」と考えています。ただ、個々の現状の力を考えると、がっちりと打順を固定するのはまだ難しいです。なので、絞りきれないところもありますが、とりあえず開幕戦を想定した打順として考えてみました。

――開幕戦で対戦する、阪神の青柳晃洋投手を想定した打順ということですね。

篠塚 そうです。勇人の5番も考えたのですが、青柳との相性があまりよくないので、5番に置くと4番の岡本が歩かされてしまうかなと思い、3番に入れました。開幕戦に限らず、一番大事なのは"岡本の後ろ"だと思うんです。シーズン全体で考えれば勇人が5番でいいのですが、開幕戦の5番は丸、梶谷あたりかなと。

 1番には足のある選手を置きたいので吉川。2番は門脇も考えましたが、門脇よりも打率・出塁率が期待できる松原か佐々木。ここに浅野ら若手が割って入っていけるかですね。6番には大城を入れます。大城は調子がよければ打順を上げますが、本来は大城が7、8番くらいに入る厚みのある打線にしたいですね。現状でがっちり固定できるのは4番の岡本だけ。あとは個々の状態や相性などで打順を動かしていくんじゃないでしょうか。

――信頼できるのは、岡本選手のみ?

篠塚 勇人もそうですが、いつまでもふたりに頼っていてはダメです。若い選手が力をつけてチームを底上げしていかないといけません。そうでなければ、いつまでも打順を固定できませんし、昨季までと同じになってしまいます。慎之助はあまり打順をいじらないかもしれませんが、打順を固めるには、各選手がある程度の成績を残さないと。

 勇人と岡本は計算できますし、大城もそこそこ実績はありますが、ほかの5人はどうなるかわかりません。佐々木も萩尾もオコエもそう。ベテランの長野や丸に関しては、シーズンの要所要所で力を出してくれればいい、という考えだと思いますよ。丸の状態次第では、開幕からセンターで使うかもしれませんね。

――先ほどのオーダーでセンター候補に入っている佐々木選手は、バックアップというよりも先発で使っていくべきですか?

篠塚 佐々木は状態がいいので、最初からスタメンで使うのもアリかと思いますが、問題はそれを継続できるかどうか。吉川、秋広もそうでしたけど、過去に状態がいい時があっても長続きしませんでしたから。

 ただ、首脳陣目線で考えれば、悪かったらすぐに代えてしまうのではなく、我慢して使っていけるかも大事です。必ず調子が落ちる時期はくるので、その状態でもプレーさせて、あとに繋げていかなければ選手は育たない。当然、一番大切なのは選手自身の頑張りですし、毎年新しい選手が加わるたびに代えられてしまわないよう、成績を残して信頼を得なければいけません。

――とはいえ、ブレイクが期待される若手が増えてきましたね。

篠塚 若手がどこまでやってくれるか、という楽しみが多いシーズンになりそうですね。シーズンに入ると、各チームのエース級のピッチャーと真剣勝負をする機会がありますが、そういった壁にぶつかった時にどう対処していくかに注目したいです。

(今中慎二が考える中日のベストオーダー 課題の得点力アップへ「チーム状況はいい」>>)

【プロフィール】

◆篠塚和典(しのづか・かずのり)

1957年7月16日、東京都豊島区生まれ、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。

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